気候変動を3時間で学ぶ! 世界130ヶ国 100万人へと広がり続けるClimate Freskワークショップの広め方

2023年12月20日

\ ぜひお気軽にシェアしてください /

今回は、今世界中で広がりつつある「気候変動の全体像を3時間で学ぶ」Climate Freskと言うワークショップのご紹介です。 2023年12月現在、日本では受講者が2000人くらい。まだ日本語で主催するファシリテーターの数が少ないこともあり、今後の広がりに可能性がありそうです。 私もファシリテーターのトレーニングを受講してみたので、知ってもらうきっかけとしてぜひご紹介させてください。

気候変動は様々な問題の根源となる課題

「気候変動の全体像を学ぶことは、なぜ大事なのでしょうか?」


それは、今の社会にある様々な課題の根源となる要因の1つが気候変動だからです。例えば、気候変動が進むと生物多様性が失われ、農作物などの収穫に影響し出し、戦争が起きる可能性が高くなります。

私自身、被曝3世ということもあり、戦争が起きないようにするためには何でもしたい気持ちがありますが、そのための様々なアプローチの1つは、気候変動を進めないことだと理解しています。気候変動が起きる流れの全体像を掴むと、おそらく自分が関心が高い社会課題とのつながりも見えてくるはず。様々な社会課題をより深刻にしてしまわないためにも、全員が理解するべきなのが気候変動の基本的な知識と言えるでしょう。

IPCCのデータを元に、カードを使って楽しく学ぶ、3時間のワークショップ

実際に私が参加した時のワークショップの様子

このワークショップは、フランスのCédric Ringenbachという方が、クライアントに気候変動について説明する時に、 IPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change)*のレポートの図を印刷し、参加者につながりを見つけてもらうように進めたことから発展し、作られていったそうです。ワークショップは2015年に出来上がり、広めるための協会が2018年に立ち上がりました。日本には2019年から入ってきていて、現在2000名ほど受講者がいるそうです。(2023年12月時点)

ワークショップは42枚のカードを使って、動かしながらカードごとの因果関係を可視化していく、という進め方をします。 ちなみにカードを動かして、線で繋げていく様子が壁画(フレスコ画) に似ていることからClimate ‘Fresk’ と名付けられているようです。

参加者が一緒に、協力し合いながら学ぶこと、あとはカードを使う気軽さと楽しさがあるので、気候変動に知識がない状態でも参加しやすいところが良いところ。ちなみに私も大して知識がない状態で参加しました。 4~7名程度の少数で実施するので、適度に貢献でき、適度に周りに頼ることができ、参加しやすかったです。

おおよその目安ですが、下記のような流れで進みます。



イントロダクション (15分)
カードを使って気候変動の理解 (90分)
振り返り (30分) 
自分たちの行動を考える (30分)
クロージング (15分)

「3時間は長いな」と感じる人もいるかもしれませんが、実際やってみると短く感じます。特にカードを使った気候変動の理解のパートは、私のように知識が少ない人が参加すると、脳みそがフルパワーで稼働することになります。

ちなみに *IPCCは何万本という科学論文を基に、気候変動の科学的根拠となるレポートを作成しており、Climate Freskワークショップの内容もそれに応じて作られています。

「気候変動の知識が浅い」「ファシリテーションを知らない」人でも進めやすい「広げる」に主眼を置いた設計とコンセプト

私がこのワークショップをいいなと感じた点は、「凝縮して短い時間で、楽しく気候変動について学ぶことができる」という参加者としての経験はもちろんですが、「気候変動の知識が浅い」 「ファシリテーションをそこまで知らない」 人でも、参加者にある程度の学びを担保できる設計にしてあるところに価値があると感じました。

もちろん、気候変動の知識はあった方が、カードのつながりを早く理解することができる点で有利ですし、もしファシリテーターとして広める側に回るなら、ファシリテーションの知識や経験は、あった方がすぐにワークショップを実践しやすいという点で有利です。 ただ、しっかりプログラムが手順化してあるので、ファシリテーションの経験がない、浅い人は割とそのままやればいいし、経験者は自分でアレンジできる余地があるのもやりがいがあるなと感じました。

ワークショップを広める時にも、カードの文言を変えない、3時間以上時間を取る、必ず振り返りの時間を確保するなど、最低限守るべきラインが定められているのですが、それが良い塩梅に細かすぎないので、広げる側にとってやりやすさにつながっています。

「気候変動を止めること」を第一に、多くの人が参加できる

Climate Freskは最初は参加者として自分が学ぶために参加し、もし自分の所属するコミュニティで実施してみたいと思ったら…


の2パターンがあります。ファシリテータートレーニングも2種類あり、

  • まずはボランティアで身の回りに広げたい人 (Public training)
  • 最初から収益を得てプロとして提供したい人 (Professional training)


このように分かれています。Public trainingの受講者でも10回程度実施したら、収益を得て実施しても良いようなのですが、要は「自信を持って提供できるくらいまで経験を積んだら」という意味合いのようです。

Public trainingは主催者によってレートが異なるのですが、数千円で受講できるところがほとんどで、だからこそいろんな人が学びやすく、広めやすくなっています。

協会のミッションが「生命を守るために必要な転換を可能な限り迅速に引き起こすことに貢献するため、世界レベルで気候問題に対する理解を加速させること」と明示してあり、このワークショップを広めることを最優先するという原則があります。

企業など、収益をもらってワークショップを実施する場合は 10%をライセンスフィーとして事務局に支払うそうなのですが、それが障害となって気候変動のことを広められないくらいならそれすら手放してもらっていいと言うくらい、ミッションを貫いています。こういうカードを用いてシミュレーションしながら学ぶトレーニングは他でもありますが、その多くはビジネスとして成り立たせることが上位で、ファシリテーター認定制度で収益を出す仕組みが一般的だと思うのですが「関心がある人が関わろうと思ったら関わりやすい仕組み」を導入しているところに好感を持ちました。

今後、もし私が企業でこのワークショップを実施させていただく機会が出てきたら、恩返しにきちんとライセンスフィーを支払うつもりです。

社会の課題を解決したいなら、多くの人が貢献できる余地を作るべき

無料で学んだり、安価な金額でファシリテーショントレーニングを受けることができる点に加え、私がいいなと感じているのは、DAOのような、自律分散型組織でこのワークショップを広めていっているところです。組織はスウェーデン海賊党が開発したSwarmwise method (※すみません、日本語訳が分かりません…)を元に、5つの原則を定めてあり、その原則に基づいて貢献したい人が自主的に活動を広めています。気候変動などの地球規模の問題に対しては、広く自律的に動いていかなければ間に合いませんし、これまでと違う構造・やり方をしなければならないと考えているため、この広め方にもミッション至上主義が現れていると感じました。

私自身は社会の課題に対しては多くに人の力を活かせるようにする方が賛成で、それこそ参加したいと思った人の手に届きやすい仕組みで広めるべきだと考えています。

皆さんは、昔マイクロソフトが作ろうとした、オンライン百科事典Encartaをご存知でしょうか?多額の予算をかけ、しっかり管理しながら作ろうとしたオンライン百科事典は、自主的にいろんな人の力で作り上げるWikipediaに負けてしまいました。大きな力で管理しながら広めようとすることと、自発的に人が広めようとする仕組みにすること、どちらに軍配があがるのか。個人的に、社会課題に対しては後者の仕組みがあっていいと思っているため、この広め方の仕組みにも着目しています。

やっぱり高いのは言語の壁… 

ここまで私が感じた利点をご紹介しましたが、現状ファシリテーターになるためには、英語の読み聞きができないと難しいのが事実です。

ワークショップの体験だけでしたら現状、クライメートフレスク – Climate Fresk Japanが日本語で定期開催をしてくれています。(ただ、4名以上集まらないと開催されません) また、不定期でファシリテータートレーニングもしているようなのですが、こちらも4名以上参加希望者がいないと開催されないのと、受講者は過去に1回はワークショップの体験会に参加している必要があるため、日本語でファシリテーターのトレーニングを受ける機会はかなり少ないと言って良いでしょう。英語、またはフランス語でもOKという方はぜひこちらのページを見てみてください。

運よく、ファシリテーターのトレーニングを日本語で受講できたとしてもファシリテーター専用ページは、全て英語です。(もちろんDeeplを駆使することは可能ですが…) 個人的には、ファシリテーター専用ページも、進め方や組織の考え方などが全て動画で見れる状態に整備されており、これも意欲ある人が広めやすい仕組みの1つだと捉えました。

今後、私も体験ワークショップを開いて、日本語での参加者が増やせるように頑張ってみようと思っています。ぜひ楽しみにお待ちください! 開催する時には理事をしているIAF Japanで主催しようと思っているので、こちらのページをチェックしてください。

10歳くらいを目安としたJunior用のカードもあったり、用語の意味が難しいカードを数枚抜いた簡易バージョンを実施することも可能なので、学校などの教育機関で実施するのはとてもおすすめです。Climate Fresk発祥の地のフランスでは、大学の入門コースや大手企業の研修としても実施されているそうです。

Climate Freskについては、こちらの記事もおすすめです。良ければ合わせて読んでみてくださいね!

この記事を書いた人

玄道 優子 ー 対話支援ファシリテーター

「難しい対話を見えやすく、触れやすく。小さな声を掬いやすく」自分の生きる場を他人任せにしない人に向けて、「これをやりたい!」を生み出せる場づくりを支援します。ITコンサルタントからキャリアチェンジ/多国籍やオンラインの場づくり/Miro革命出版準備中  /IAF Japan chapter 理事

\ ぜひお気軽にシェアしてください /