私たちにとって「普通」とは? マイノリティのストーリーから学ぶワークショップの開催レポート

2020年2月14日

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誰かのストーリーから学ぶことに関心がある方へ

今回は先日こちらの記事で告知させていただいたマイノリティのストーリーから大切なコミュニケーションを学び合うイベントの開催報告です。人のストーリーから「違い」を尊重し合うコミュニケーションについて学び合う場が作ってみたいなと思って今回開催をしてみました。

違う人のことは「聴かないと」分からない

今回のワークショップは、私が普段仕事を一緒にしている合同会社LifeCrack代表で大正大学地域構想研究所研究員でもある、パトリックと一緒に開催をしました。

彼は日本在住歴20年くらいのフランス国籍の人で、ここ数年プロジェクトベースで一緒に仕事をしています。 一緒に仕事をするようになってから、私自身も「この人日本人のくせに・・・!」などと、国籍という属性で人を判断していて、「その人そのもの」を見ることができていない自分に気づくようになりました。

自分のミッションとして、「ありのままの自分で深い心のつながりを感じあえる社会」を作るために対話を通して貢献していきたいと考えているのですが「一人ひとりの違いを尊重するコミュニケーション」というテーマについてはぜひ彼と一緒にやってみたいと思って今回の企画を実施しました。

今回は、コレクティブストーリーハーベスティングという方法を使って、パトリックのストーリー(フランス国籍で、長く日本に住み、日本で結婚をして子育てをしてく時にどうアイデンティティが受け継がれるのか?)とLGBT当事者のひろきくんのストーリー(トランスジェンダーとして生きる自分が感じることと、マイノリティの世界にもある差別について)を聴き、そこからどんなことを日常のコミュニケーションに活かしていけるかを探ってみました。

あえて手法を通すことで「話せること・聴けること」を拾いたい

私はワークショップの良さの一つとして、”あえて枠組みを作ってみること” で話せること、聴くことができることがある点だと考えています。自分の周りにほとんどいない属性や環境、経験の持ち主の人のことを、どう聞いたら良いのか戸惑ってしまうこともあるかもしれません。

でも、「この聴き方で一緒に聴いてみましょう」と枠組みを決めることで、ある意味そこに頼ってその場にいることができます。例えば、私はトランスジェンダーの方は周りにほぼいないので、自分が無知なことで相手を傷つける発言をしてしまわないか心配でしたが、今回開催をして話を聴いてみて、ほんの少しだけですが「違いを知る」ことができたように思います。
今回のコレクティブストーリーハーベスティングは一人のストーリーを、複数名の聞き手が「それぞれ別の視点や問いかけを持って20分間聴き、聞こえたことを話し手に伝えることで、一つのストーリーから包括的に学び合う方法です。

今回は、2グループに分かれて、更に聴き手の方に下記の5つの役割に分かれてもらい、ストーリーを聴きました。

  • Value (価値観を聴く人)
  • Wish (希望を聴く人)
  • Fear (恐れを聴く人)
  • Pivot (変化を聴く人)
  • Listener (視点を持たず、話し手が話しやすいように聴く人)

ちなみに20分間の間、基本的には「質問をせず」ただ聴きます。(自分の興味関心を満たすための質問はしないで聴いてみる、という方法です)

パトリックのストーリーを聴くグループ
ひろきくんのストーリーを聴くグループ

「聴き方」を変えることがコミュニケーションを変える

普段、人は自分の価値観で相手の話を聴いているので、自分の都合の悪いことは聞かないようにしているかもしれませんし、自分の解釈で物事を捉えています。 でも、聴き方に役割が与えられて、別の聴き方をしている人の捉え方をきくという方法を取り入れることで、「自分だけの価値観で聞くこと」を少し脇に置けるかもしれません。 違う人のことは「聴かないと」わからないし、相手を理解することは聴き方、捉え方を色々と変えてみることで深まっていくものです。

今回は、「大切なコミュニケーションを学び合う」というテーマだったので、2グループに分かれてストーリーを聴いた後、同じ視点・役割で聴いた人同士で、聴いたこと、感じたことを共有し、最後に「聞くこと・話すこと」について話をしてもらって終えました。

「きく」ことの難しさを実感した方、またストーリーを聞いただけなのに温かさを感じたという方、そもそも「普通」なんてないのではないかと感じた方などがいらっしゃいました。普段から相手の話を聞こうというのは簡単ですが、機会や枠組みがあって話しやすくなることはきっとあるはず。

私たちも実施してみたことで分かったこと、感じられたこともあるので、今度もぜひプログラムの質を高めて継続的に開催したいと思っています。

おまけ ストーリーから学ぶ場づくりとは

ここからはおまけとしてストーリーを使ったワークショップを設計・進めるコツとして私が現時点で感じていることを書いてみます。自分もワークショップをやっている・こういうイベントを開いてみたい方は良ければ参考にしてみてください。

インストラクションは手順を追って、ある程度しっかり行う

今回は視点・問いかけを書いたカードを作ってみました。

今回のような枠組みがあって話をする・聞く場はインストラクションをファシリテーターが丁寧に行うことがコツの1つ。例えば、何をするかは書いておき、参加者が覚えなくてすむようにすることで話す・聞くにより集中しやすくなります。

ストーリーを聞くところまでに安心感を高められるように

また、参加者同士である程度知り合うとか、話をするなどして小グループで話を20分聞くまでに場を温められるようにします。他の参加者と一言も交わさないままグループに分かれて、20分ただ話を聞くは結構しんどいもの。 今回はどんな人が来ているかを知るミニワークと、少人数に分かれて一言ずつ話す時間をとりました。

なんと私がどんな人か気になって来てくれた人がいたようです笑。ありがとうございます!

ファシリテーター自身のペースを落とす

このコレクティブストーリーハーベストですが、過去に何度も実施しているのですが、場のペースが早い、ファシリテーターが焦っている(「今日な時間がないので!」 とか、そこまでのワークが早いスピードで進むとか)とストーリーを話すときに、話し手が20分話せず終わりがちな印象を持っています。

特にファシリテーターの話すスピードや態度は、参加者に影響を与えるので焦らずゆっくり目なペースで進めることを意識しました。

いかがでしたでしょうか。周りの人とのコミュニケーションはいかに「聴く」ことができるかで決まります。私自身もたくさんの人のストーリーを聴き、周りの人のことを大切にできる自分になっていきたいと考えています。また開催する予定なので、ぜひ関心がある方は次の機会にご参加ください。

この記事を書いた人

玄道 優子 ー 対話支援ファシリテーター

「難しい対話を見えやすく、触れやすく。小さな声を掬いやすく」自分の生きる場を他人任せにしない人に向けて、「これをやりたい!」を生み出せる場づくりを支援します。ITコンサルタントからキャリアチェンジ/多国籍やオンラインの場づくり/Miro革命出版準備中  /IAF Japan chapter 理事

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