ファシリテーターは研修をどう設計する? あなたのトレーニングを参加型にする7つのヒント

2019年8月9日

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研修などの場を参加型にしたいあなたへ

今回は、アメリカ在住のファシリテーターBarbara MacKayの記事を翻訳してご紹介させていただきます。ファシリテーターでも、そうではない人にも役立ちそうな、「場づくりを参加型にするヒント」について書かれた記事。ぜひ、あなたの場作りに役立ててみてください。
 

 

記事を読む前に…

この記事は、Northstarfacilitators 代表のBarbaraの記事を翻訳させていただいたものです。(ご本人に翻訳して紹介することの許可はとっています。かなりラフにTwitterで聞いたのですが…。)

自分の勉強も兼ねて翻訳しているものの、私はプロの翻訳家ではありませんので、正しいニュアンスを知りたい方、英語ができる方はぜひ、こちらの記事より原文をお読みください。 ( 読みやすくするために意訳するなどの工夫はあまりしていません。)

 

はじめに

(ここから翻訳記事です)
あなたもきっと研修、トレーニングをもっと参加者主体したいと思うことがあるでしょう。典型的な研修は、大なり小なり、コンテンツや学びを参加者に受け渡すものであり、理論や情報を届ける形式だからです。良くて、それらが学びとして残りやすいようなアクティビティもあるくらいです。

 

しかし、これはトレーナーが先生で、参加者が学生であるという階層モデルに重きがおかれています。 近年、研修はより協創的に、かつ双方向に学びあってエンゲージメントを高めるためにも、ファシリテーションの技術を取り入れていっています。

 

それではどのようにして、知識を届けながら、その場の参加者の知恵も大切にしていくのでしょうか。

 

 

この記事では、いくつかの原則と、私たちの実践をお届けします。カナダのアルバータ州在住のジョン・レスターは、以前のこの記事のドラフトに深い洞察とフィードバックを与えてくれました。深く感謝を捧げます。

 

 

私自身はトレーニングを25年にわたって行ってきました。ここ数十年の間、私はトレーナーのための研修、特に研修を主体的かつ、尊重しあうものにするための神経科学に重点が置かれているものをいくつか受講しています。この記事ではその学びの「氷山の一角」をお伝えしたいと思います。読んで下さった方が、参加者主体のトレーニングの方法について、学んだことや気づいたことを私や、他の読者に共有してもらえたら嬉しいです。

 

 

 

お伝えし始める前に、1つ覚えておいていただきたいことがあります! それは、トレーナー自身がすべての知恵をもっているわけではない、ということ。

 

 

 

80~90%の叡智は、その場の参加者からもたらされます。トレーナーであるあなたが、参加者の知恵や経験を豊かにすることに力を尽くすことができたら、参加者は尊重されていると感じて、もっと主体的に学び、トレーニングでの情報や学びを活かしていくことでしょう。

 

 

では、ここから7つのちょっとしたヒントと、それらを活かすための6つの事例をご紹介します。それぞれの原則のメタファーとして、私が今過ごしているメキシコやコスタリカの写真(*)を載せますね。写真に写っているのは私の娘と息子です。ちなみに、写真などのメタファーを使うことも、記憶に残りやすくするテクニックの1つですよ。

*原文ではBarbaraの私物の写真が使われているので、この記事では私個人が選んだイメージを載せています。もし良ければ、写真だけでも原文のページを見てみてくださいね。

 

 

あなたの次の研修にファシリテーションの技術を取り入れ、参加者主体の場にするための7つのヒント

 

1. 全体の時間の中でプレゼンテーションのコンテンツの時間は最大で20〜25%に留めます。もちろん、参加者やその場の文化、クライアントのリクエストによってその最適解は変わりますが、15〜40%の間にするのが良いでしょう。

 

 

2. 新しい内容に入るとき、以下の2つの質問から始めるのが理想的です。
・すでにこのトピックについて知っていることはなんですか?
・このトピックについて、もっと知りたいことはなんですか?

 

 

3. コンテンツの区切りごとに、グループの情報を統合できるようなアクティビティや一連の質問を準備しておきます。30〜50%はそれに時間をかけてくださいね。 例えば、もし30分のプレゼンテーションを行なったとしたら、少なくとも10〜15分は参加者がそれを学び、統合する時間をとります。

 

4. あなたのトレーニングで教えているスキルやテクニックなどを参加者がその場で実践練習できるような議題を与えましょう。例えば、私たちのToPファシリテーション基礎スキルコース*ではコースの35%の時間を実践の時間に充てています。皆、このコースを気に入ってますよ!

*著者のBarbaraはToP Facilitationというコースのファシリテーターをしています。

 

5. 参加者に学んで欲しい手順や方法をデモンストレーションして、参加者にどんな風にそれらを取り入れるかをイメージしてもらいましょう。トレーニングの時間の中で25%程をその時間のために残しておくといいかもしれません。

 

 

6. 身体を動かすアクテビティを足してみましょう。 例えば、ストレッチの休憩,  「最高のダンスを見せてください!」と言って踊る, 施設内を歩き回る, ゲームや、エネルギーが上がるアクティビティなど。1回のトレーニングで、1つか2つ、短いワークを取り入れられると良いでしょう。(全体の時間の5%以下にしてくださいね。)

 

 

7. もしあなたがリモートなどの環境でトレーニングをする必要があるなら、投票を取り入れることを選択肢に入れてください。 ( 正解か不正解を選んでもらったり、回答をいくつか選択してもらったり、入力してもらう仕組みを取り入れる、と言う意味です )  いくつか質問を準備して、chat pods*1で参加者が回答できたり、オンライン上のブレイクアウトルーム*2でグループワークをしたり、クイズをしたりという感じです。もちろん、これらは対面のトレーニングでも有効ですね。もしクイズなら、実際に正解を発表する前に、参加者が回答に近くようにサポートすると良いでしょう。

 

 

*1  FacebookのメッセンジャーやLINE、Slackのやりとりのように会話のやりとりをする機能・サービスのこと。

*2 オンライン上で小グループを作ること。例えば、6人の参加者がいたとして3人ずつの小グループをオンライン上で作るイメージ。

 

 

 

7つのヒントを実践的に活かす方法

 

・議題のはじめに、主なテーマについて説明するための小さなフリップチャートを準備しておきます。それぞれのテーマごとにそれを設置しておき、参加者が動いてテーマを見ながら、自分の関心の度合いを示すことができるようにしておきましょう。 参加者がテーマを見ながら、ペンで丸をつけたり、最も関心があるテーマにドットシールを貼ってもらうようにしたりすると良いでしょう。こうしておくと、トレーナーであるあなたは、アジェンダを変更することなく、どこにフォーカスして話すのが良いかを考えることができます。

 

 

・小グループを作り、グループごとにトレーニングで学んだ理論のトピックを担当します。そして、学んだ内容をミニプレゼンをしてもらいましょう。10分準備時間を与え、5分でそれをやってもらいます。ミニプレゼンのためにフリップチャート、マーカーペン、小さなおもちゃやシール、粘土やモールなどを準備しておきましょう。活気があって、ドラマティックで楽しいプレゼンがいいですね。

 

 

・デモンストレーションや、新しいテクニックや手順、ケーススタディを共有した時にたくさん質問してください。例えば、こんな感じです。

「この手順のステップで何に気づきましたか?」「どのステップが簡単でしたか?どれが難しかったですか?」「もっと知りたいのはどんなところですか?」「この手順・プログラムを使ってみることで、どんなインパクトがありましたか?」「どんな違いを生み出すでしょうか?」「 この新しい手法、ポリシー、テクニックなどを表すのに相応しい、ワクワクするような、キャッチーな表現はありませんか?」

 

 

または、コンテンツの共有を行なった後に( 例えば、パワーポイントの説明、デモンストレーションなど )、参加者に他の人と一緒にそれについて発想を広げるような質問をします。話し合った人同士が感じた疑問点を2〜3つ書いて提出してもらうのもいいですね。参加者からの質問に、他の参加者が答えるようにしつつ、もしその場で重要なポイントとなることが上がらなければ、あなたからも補足するようにしましょう。

 

 

研修の中で特に重要な情報・要素を要約するアクティビティとして、参加者一人ひとりに4つに区切られた紙を配ります。( 8.5 x 11インチのレターサイズ か A4 の紙が良いですね )  研修で実施したメインの4つの内容について、イメージで書いてもらうようにします。それから、他の2人に共有してもらうようにして、最後に、いくつかをサンプルとして全体グループでも共有します。

 

 

参加者が重要なポイントのコンセプトをより理解することをサポートします。このジグソーアクティビティは「 The back of The Room (*リンク先の本) 」という本から得ました。それぞれのテーブルに同じセットのコンセプトカードを配ります。それぞれのカードには異なるコンセプトが書かれています。それぞれのテーブルで、メンバーは1枚カードを選び、他のテーブルを見渡して自分と同じカードを選んだ人を見つけます。同じカードを選んだ人同士で、そのコンセプトの詳細や、大切な部分を話し合います。トレーナーであるあなたは、そのワークの様子を見て回ることで、自分が伝えたかったことが伝わったかを確認することができるでしょう。10〜15分経ったら参加者に、素の自分のテーブルに戻ってもらい、カードを元に話をした内容を思い返し、書き残す時間を作りましょう。研修の中の、いくつか大切なポイントに絞って実施したらワークは終わりにします。

 

 

終わりに

では、あなたが次のトレーニングのために準備したプランを見てみましょう。あなたのプランに取り入れられそうなのは、ここまでのどんなアイデアか、自分に訪ねてみてください。そして、それは研修のコンテンツ自体を減らすことになるかもしれませんが、参加者がその内容を実践的に取り入れることをより手助けすることになるでしょう。

 

オマケ :  もしかしたらあなたは、コントロールを手放すことへ恐れを感じるか、自分が提供する価値が少なくなるように感じるかもしれませんが、ここまでのアイデアを既に実践している私たちから言わせてください。

 

– あなたはもっと価値を提供できます!

– これまでよりもっと、参加者にとって楽しく意義がある時間になるはずです!

– あなたはきっと、トレーナーとして再度リクエストされるようになるでしょう! 

–もっとトレーニングの設計はもっとクリエイティブなプロセスになるはず。

–あなたは思慮深く、寛大に、楽しく、そして謙虚なトレーナーとして成長し続けるでしょう。

この件に関して、ぜひあなたの考えを共有してくださいね! (翻訳ここまで)

 

 

読んでみて

ここで書かれていることは、いわゆる「ファシリテーション」を実践に取り入れている人にとっては「そうそう!」「あ、そのやり方も良いな!」ときっと感じると思います。 私自身、自分の場に取り入れているものも多かったですが、更に取り入れたいことも見つかりましたし、日本でここまでまとまった記事を見つけることがなかったので、記事を発見した時には感動しました。  (この記事は、かなりの実践者じゃないと書けない内容だと思うので)

 

残念ながら日本ではまだ、ファシリテーションという関わり方の可能性があまり広く知られていないと感じています。  個人的な所感ですが、日本でファシリテーションというと問いかけたり、参加者同士が話をする時間を作ることは取り入れられていても、空間や道具を使って工夫するということがまだ少ない印象があります。

 

研修・トレーニングのプロセス、つまり進め方に工夫をしたら参加者がもっと楽しく、お互いで学び合うことができるはず。日本のファシリテーターの皆さん、一緒に頑張りましょう!

 

 

 

Barbaraのブログはこちら
他にも実践のヒントとなる記事がたくさんあります!

この記事を書いた人

玄道 優子 ー 対話支援ファシリテーター

「難しい対話を見えやすく、触れやすく。小さな声を掬いやすく」自分の生きる場を他人任せにしない人に向けて、「これをやりたい!」を生み出せる場づくりを支援します。ITコンサルタントからキャリアチェンジ/多国籍やオンラインの場づくり/Miro革命出版準備中  /IAF Japan chapter 理事

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