心理的安全性を分かりやすく知りたい方へ オンライン化の時代と心理的安全性の必要性
2020年4月4日
心理的安全性って何?という方へ
Googleの調査によって一気に脚光を浴びた “心理的安全性” という言葉
心理的安全性、という言葉をご存知ですか。現代ビジネスさんが2016年「グーグルが突きとめた!社員の「生産性」を高める唯一の方法はこうだ」というグーグルがチームの生産性を高める要因を調査した記事を発表したことで一気に広がりました。 この記事では生産性が高いチームでは「心理的安全性が高い」と結論づけています。
下記に一部引用させていただきます。
浮かび上がってきたのは「他者への心遣いや同情、あるいは配慮や共感」といったメンタルな要素の重要性だった。つまり成功するグループ(チーム)では、これらの点が非常に上手くいっているというのだ。
たとえば一つのチーム内で誰か一人だけ喋りまくって、他のチームメイトがほとんど黙り込んでいるチームは失敗する。逆に(途中で遮られるかどうかは別にして)チームメイト全員がほぼ同じ時間だけ発言するチームは成功するという。
それは暗黙のルールとして、そのような決まりを押し付けるのではなく、むしろ、自然にそうなるような雰囲気が、チーム内で醸成されることが重要なのだという。
つまり「こんなことを言ったらチームメイトから馬鹿にされないだろうか」、あるいは「リーダーから叱られないだろうか」といった不安を、チームのメンバーから払拭する。心理学の専門用語では「心理的安全性(psychological safety)」と呼ばれる安らかな雰囲気をチーム内に育めるかどうかが、成功の鍵なのだという。
社員一人ひとりが会社で本来の自分を曝け出すことができること、そして、それを受け入れるための「心理的安全性」、つまり他者への心遣いや共感、理解力を醸成することが、間接的にではあるが、チームの生産性を高めることにつながる。 これがプロジェクト・アリストテレスから導き出された結論であった。
引用はここまでです。この記事が発表される前からチームの関係性・協働性を高めるためにチームへのコーチングを仕事として行っていたのですが、やはり、記事が発表されてから、導入を検討されている方へ圧倒的に説明しやすくなりました。
心理的安全性が高いと、チームの中で話せる範囲が広くなる
心理的安全性は、もう少し簡単に表現すると言いづらいことも言えて、聞きづらいことも聞きあえる安心感のことです。皆さんも、普段職場や、自分の属するコミュニティで、「このチームの話し合いはリラックスして何でも言いたいことが言えるな」という場合と、「今日の会議は、意見すると細かい指摘をする上司がいるから、下手なことを言うのは辞めておこう」と感じる場合があると思います。
チーム内で話せる範囲が広くなることで、多面的に物事を捉えて話し合いをすることが可能になるため、そのチームにとって最適な方法を選びやすくなります。
例えば、私は普段、仕事の一つであるシステムコーチングは50代半ばの男性コーチとペアを組んでいます。(*システムコーチングは、基本的には2人のコーチがチームに関わります。) 私たち2人の関係性がもたらす「成果」は、「2人でクライアントにとって最高のセッションを提供すること」です。
この時、私が「自分の方が年下だし、社会人経験も相手よりは短いし…」と遠慮して、相手の意見と違う意見を思いついても言わなかったとしたら、結局実施するのは「相手の考えたセッションのお手伝い」になり、2人で実施する相乗効果をあげることが出来ません。
また、相手に私が意見したことを聞き入れる力が無ければ、いくら私が意見しても同じことが起こります。
つまり、心理的安全性が高いチームになるためには、
- 自分自身が、チーム内で今より一歩本来の自分自身をさらけ出せるよう、今まで言わなかったことも言ってみる
- 相手の話が、自分にとって聞きづらいものであったとしても、聞いて受け止める
必要があると言えるでしょう。
健全に自己肯定感を育んでいる人が、チームづくりに貢献できる
これまで、わたし自身もいろんな人と一緒に働いた経験があり、それぞれのチームで心理的安全性が高いチームになるために実践をしてきたつもりです。
ただ、経験上「言いづらいことを言う、聞きづらいことを聞く」実践を、すんなり実行にうつすことができる人は、ある程度精神的に成熟していて、健全に自己肯定感を育んでいる人なのではないかと感じています。
例えば、話し合いをしていて相手と違う意見を言ったとき、「自分の意見が否定された」と感じて感情的になる人もいますし、「より良くするためにその人なりの意見を発言した」と前向きに捉える人もいます。
自分にとって、耳の痛いことを言われた時に「なんてひどいことを言う人だ!」と憤慨したり、過剰に傷ついて辛い雰囲気を醸し出したりする人もいますし、「『その人にとってはそう感じたんだ』と受け止め、次は違う言葉や、関わりを探してみよう」と捉える人もいます。
人に評価されていないと、自分に価値がないと捉える人もいますし、自分で自分を認めることが出来ていればいいと捉える人もいます。 自分で自分を認めることが出来ていればいいと思う人の中にも、失敗している自分や、何かが出来ていない自分には価値を見出せない人もいます。
チームのメンバーに前者の人が多いのと、後者の人が多いのではどちらが心理的安全性が高いチームになるかは明白です。 ありのままの自分に価値があると、健全に信じられる自分自身でいることが、チーム力を高める第一歩と言えるのではないでしょうか。
オンライン化の時代こそ、心理的安全性はますます大切に
心理的安全性はGoogleが名付けた新しい概念というわけではありません。現在、チームの心理的安全性についてはエイミー・C・エドモンドソン氏の研究が最も有名であり、その前には、組織開発の大御所とも言えるエドガー・シャイン氏や、ウォレン・ベニス氏が心理的安全性について言及したと言われています。
Googleの調査により、チームの関係・コミュニケーションの在り方が成果につながるということが、証明され一気に広がっていったと言えるでしょう。
また、現在新型コロナの影響で、仕事をリモートワークに切り替える企業や、働き方を変えている人が増えていると思います。わたしも仕事仲間との打ち合わせはオンラインで実施することも多いので体感しているのですが、「組織力がない (=協力しあいたいという関係性が弱い) 」チームはリモートになると弱いです。
こんな記事も見つけましたので、ぜひ読んでみてください。
【リモートワークの盲点】やってみて気づく「寂しさの本質」と「組織の力」
チームワークが弱い組織がリモートワークを行うと、チームがさらに崩れ、悲惨な状況が待っている
離ればなれの環境にいるからこそ、チームの力が問われる
もちろん、リモートワークの中で心理的安全性を高める仕組み (記事の中では、雑談をしやすくするツールの紹介がされています)も必要ですが、同時に人が集まった場では一気にお互いの関係性・コミュニケーションを高める工夫も必要になってくるでしょう。
ますますリモートの働き方も増えていく社会の中で、離れていても発揮できるチーム力を育むことが何よりも大切になってきており、その流れで「心理的安全性」を高めるという視点はチーム、コミュニティ、組織の運営に欠かせなくなりそうです。
さらに詳しく知りたい方に向けて
今回、わたしなりに「心理的安全性」について噛み砕いて説明してみました。初めてこの言葉に出会う人を想定して書いたので、もっと専門的に知りたい方もいるのではないかと思います。
より詳しく知りたい方は、先にご紹介したGoogleの記事に加えて、こちらの記事を読んでみることを強くお勧めします。
いま話題の「心理的安全性」について、本気出して科学的に分かりやすく説明してみた
また、もちろん心理的安全性について研究をされているエイミー・C・エドモンドソン氏の著書を読んだり、TED (他人同士の集まりをチームに変える方法) を見るのも良いでしょう。
もちろん、いくらリモートワークが可能になったとはいえ、直接人が出会い、対話し、知り合う喜びは何者にも変えがたいもの。 人が集まる場で、効果的に心理的安全性を高められるようにしたいという組織の方は、ぜひお問い合わせくださいね。