” 呼吸するように ” 社会を育む、望む未来へとつなげる8つのステップ

2019年10月12日

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 社会のために、何かしらのアクションをとりたいと考えている方へ

今日は、Art of Hostingというトレーニングで共有されている8 ブレス( breaths )という考え方をご紹介します。この8 ブレスは活動家の人たちが、望む方へ変化を起こすために、チームで持っていると役立つフレームワークです。何かしらのプロジェクトや活動をしている方は、知っておくと助けになるかもしれません。

プロジェクトを始め、終えるまでの一連のステップ

今回、紹介するのは私がプロジェクトや活動を起こす時に意識していて、他の仲間と共有しているフレームワークです。これは、Art of Hostingというトレーニングで共有されている考え方なのですが、普段、一緒に仕事をしている人もこれから一緒にプロジェクトを実施するチームもArt of Hostingの実践者であることが多いので、周りとも一緒に8ブレスの実践をしています。

 

それぞれのステップで意識することを、明らかにするだけで、活動を進めやすくなる実感を持っています。恐らく、これまで何かイベントや活動を立ち上げ、実施してきた方にとっては自然に実施していることも含まれているはず。

 

せっかく想いを込めてスタートさせる活動、プロジェクトなのですから、不要なところで悩んだり手戻りしたりするのではなく、本当に大切にしたいことに時間を割くべき。ということで、6〜7年実践してみた私の経験から、8ブレスというフレームを書いていきたいと思います。

 

この記事はこちらの資料と私のこれまでの実践を元にしています。英語OKという方は、ぜひ資料も目を通してみてください。

1 “ブレス” ずつのご紹介

では、ここから1ステップ (=1ブレス) ずつご紹介していきます。もし、ご自分で立ち上げた、または参加している活動、プロジェクト、イベントなどがありましたら、それをイメージしてもらうと理解しやすいと思います。

呼びかけ ( The call )

まず、1つ目のブレスはTha call、呼びかけです。 とにかく、Art of Hosting界隈ではcallだの、callerだのcalling questionだの言うのですが(笑)、これは新たな活動はたった1人の情熱、想いから始めることを大切にする姿勢からきています。 ( 明確に、a person who deeply holds a question 、と書かれています ) 

 

新たな活動は「ものすごくこれがやりたい!」という想いを持った呼びかけ人 ( = caller ) が、共に進めたい仲間を誘い、どんなことを呼びかけたいのかを探求する、これが1ブレス目となります。
「皆の想いをミックスして頑張ろう!」ではなく、初めはたった1人の想いからスタートすることが大切。呼びかけ人には、この後全てのプロセスをホールドしていく覚悟が求められるため、ここで「なぜやりたいのか」を焦らず、深掘りしていきましょう。

 

呼びかけ人の想いが甘かったり、明確じゃない、弱いものだとその後の全てにそれは影響しますし、実際の現場で「結局、何がしたいんだろう?」と周りを錯綜させかねません。

 

とにかく、このブレスのポイントは焦らないこと。呼びかけ人の想いが曖昧なまま進まないこと。そして、極論、その想いがまだ弱いことが明らかになったら、そこで辞める勇気を出すことが大切。呼びかけ人のコミットメントなしに次のブレスには進まないようにしましょう。

 

現在、Art of Hostingは日本で、年に1〜2度開催されていますが、この考え方にのっとって進めているので、この「呼びかけ人」をしたいという人が現れなければ、Art of Hostingは開催されません。

まずは、たった1人の想いからスタートする、これが大切です。

明確化 ( Clarify )

次のブレスは、明確化になります。 誘ったチーム同士で大切にしたいこと、方向性を明確化し、コアチームを確かにしていくブレスです。 呼びかけ人の想いを、チームのものにしていくプロセスとも言えるでしょう。

 

  • 私たちは何のためにこのプロジェクトをするのか?
  • どうやって現状からゴールに辿り着くのか?
  • 私たちが大切にしたいことは?

 

など、チームの幹を作っていくようなブレス。このブレスでのポイントはお互いに推測しあったりせず、丁寧に対話して、お互いのこと・私たちのことを知っていくことです。コアチームのエンゲージメントが高まり、方向性や大切にしたいことが浮かび上がったら、次のブレスへ移りましょう。

招待 ( Invite )

次は、招待するプロセスを実践するブレスです。ここまで話をした方向性、大切にしたいこと、自分たちのニーズを踏まえて、

  • 誰を招きたいのか?どうやって声をかけるのか?
  • 当日、どこで、どんな場をデザインするのか?
  • プログラムの内容は?
  • チームとしてどんな準備が必要なのか?
  • チームとして共にいるために、どうすれば良いのか?

など、実現に向けての計画を練るブレスであるため、最も時間がかかると言っても過言ではありません。 何かのプロジェクトやイベントを実施するときに、ありがちな失敗はこのブレスのことから話そうとしてしまうこと。

 

なるべく我慢して、何のためにやるのか? 方向性は? どんな成果を求めてるの? 私たちがこのプロジェクトにかけるニーズ (想い)は?というようなことを先に話をしておくことで、このブレスの幅や深さは格段に変わってきます。

何度も何度も話し合いを重ねて進めていきます

 もっと知りたい方に向けて

この2〜3つ目のブレスは、進めるのに話さなければならないことが多く、かなり時間がかかるのですが、闇雲に進まないために、AoHの実践者の間ではChaordic stepping stonesと言うフレームを使っています。英語での最新版はこちらにあります。日本語で知りたい方は私がセミナー形式でnoteに記載をしているので、関心がある方はぜひ見てみてください。

出会い (Meet)

このブレスがイベントなどの実際の、当日の場を指します。3つ目のブレスで、話し合いをしたデザインを元に対話し、集合知を育んでいけるよう場をホールドします。大切なことは、「良い話し合いだったね」だけで終わらせないこと。そして決して1人で実施しないこと。

 

ありがちなケースで言うと、このブレスはファシリテーションに慣れた人が進めがちになります。例えば、プログラムの全部を、出しゃばって私が進めちゃう、とかね。もちろん、場によってはそれもOKなのですが、できるだけチームで実施、皆でホールドするようにします。その方が参加者から、言葉も出やすくなりますし、相乗効果をあげられる場になるからです。

 

このブレスで大切なことは、ファシリテーションにむしろ慣れている人が積極的に、他のチームメンバーを励まし、一緒に実践することにトライすることだと考えています。そして、集合知(=ハーベスト)を残せるように関わっていくことです。

ここまで丁寧にブレスを進めてきて、当日を迎えるのはとっても感慨深いものがあります。

 

*この8ブレスは、プロジェクトマネジメントツールではなく、あくまで望む方へ変化を起こしていく活動家のためのフレームなので、長期的な変化を起こしやすくするには?という視点で問いかけや、大切にすること (例えば、このブレスなら「1人でやらないこと」など) が定められています。

その場からの収穫 (Harvest)

5つ目はその場からの収穫(=ハーベスト)というブレスです。 この収穫を意識的に行うことも社会に変化を起こすために大切な要素と言えると思います。話し合いをすると「何となく、良かったよねぇ」という場で終わることもあり、そこから何を生み出せたのかまで意識的になるか、ならないかはその後に大きな差を生みます。

 

収穫したものを目にした人が、自分1人では気づけなかったことに気づき、更に学びを深められるといいですね。 ハーベストには可視化できるものと(話し合った内容をまとめた記事やサイトとか、グラフィックレコーディングもいいですね)、可視化できないもの(培った関係性、ネットワークとか)の両面があることと、それらをどう収穫予定か、まで話し合いが出来ていると良いでしょう。

 

そうです、「変化を起こすため」には、それこそ植物が育つように、長く準備、実践をしてきてようやく得られるものなのです。

 

  • 見えてきた、隠れたパターンとは?
  • どんなアクションを思いついたのか?
  • どんな実践をして、何を大切にしていくのか?
  • チームとしてどんな準備が必要なのか?
  • チームとして共にいるために、どうすれば良いのか?

 

 

いろんな面から、ハーベストを眺めてみることで、実践の幅も増えることでしょう。 個人的には、何を収穫するか?を話し合って対話やイベントを実施することがまず、最初の実践としては大事で、次のレベルとしては「収穫したことをどう活かすか?」まで話してから設計できると、かなりの実践者だなという印象がします。

 

この辺りは、私の好きなプロセスデザインの領域なので、また具体的に説明する記事を書こうと思います!

 

 

実行 (Act)

このブレスは4の当日の場から得られた知恵、アクションを実践してみるというブレスです。 このブレスで大切なことは、「そもそも、何のためにやっているのか?」を忘れないこと。目の前のアクションだけに気が取られてしまうと、本来の目的を見失ってしまいます。 意義を忘れたアクションは、続きづらいもの。それを見失わず、実践を助け合えるコミュニティや仕組みがあることが大切です。

振り返り (Reflection/Learn)

7つ目は、ここまでのプロセスを振り返って学ぶブレス。進めてきて、

 

 

  • どんなことに気づいたか、私たちが得たこと、学んだことは?
  • 設計したデザインはどのように機能したか?
  • 再度やるなら、何を変える? 辞める?または足す?
  • 私たちが祝福したいことは?

 

 

と丁寧に振り返ります。 振り返りはここまで進めてきた枠組みごとに行います。例えば、4の当日の参加者全員で行う振り返り、そして主催チーム(コアチーム)の振り返り、呼びかけ人の振り返り、というように。

 

繰り返しになりますが、8ブレスはイベントをただ開くためのステップではなく、長期的に変化を生み出す活動家のためのフレームなので、この「振り返ってやったこと、起きたことから学ぶ」というプロセスは欠かせません。

全体をホールドする (Hold the process)

最後のブレスは、8ブレスの中で最も大きい枠組みで囲われている「全体をやりきる、ホールドする」というブレスです。 1つずつのブレスで、揺らぎ、恐れ、心臓が高鳴る瞬間があるかもしれませんが、長期的な視野を持ってゆったりと全体をホールドする、それも大切な実践の1つです。

ブレスを表す、謎の記号は何? なぜ、ステップではなく “ブレス” なの?

この8ブレスですが、他の紹介記事を見てもらっても分かりますが、全てこの謎のUFOみたいなマークでステップが表現されています。

 

これは、ファシリテーション、対話などを学んだことがある方は馴染みがあるかもしれませんが、拡散→混沌・探求→収束を表しています。全てのブレスは、(&全体を通して) 、この拡散→混沌・探求→収束を繰り返しながら呼吸みたいに進んでいくよ、という意味ですね。 そして、こういうフレームワークは、一般的にはステップと表現されることが多いですが、このフレームではブレス、つまり呼吸という言い方をしています。ブレスと表現している理由は、

 

1. 特別なこと、ではなく呼吸をするように(=日々自然に行っている)実践する。
2. 呼吸は吸ったら吐くしかない(やっぱり吸うの上手くいかなかったからやり直し!とかない) ことから、1ブレスをやりきる

 

という意味が込められいるんだそうです。このブレスという表現の仕方も、自然な生命の流れというか営みを感じさせる表現で私自身、とても好きです。

共通のフレームワークは、活動の礎になる

さて、ここまで私が変化を生み出したい活動、プロジェクトを進める時に仲間と意識している8ブレスというフレームを紹介してみました。

 

あくまで、フレームなので、土台にしながら実践しないと何にもならないのですが、私は周りのAoH実践者と何かを一緒にする時には、この8ブレスを意識して進めています。 こういう共通のものがあると進め方に迷ったり、無駄な時間をかけたりせず、本当に話す必要があることに集中していける感覚があります。

 

このフレームは世界中のAoH実践者が礎として持っている考え方なので、多くの実践者の知恵が詰まっているものです。だからこそ、世界中の人と一緒にこれからも実践してくのだなという心とともに、これからも実践に取り入れて行きたいと思います。

 

 

 (参考)この考えの元になったのは・・・

この記事を公開後、Twitterで共有したらChris Corrigan氏に「この8 breathsの原型はSam Kaner氏のThe Diamonds of Participationという考えだよ」と教えていただきました。私が考えたものではなくて、彼のコンセプトを元に、様々なArt of Hostingの実践者が向上させていったものであるということを改めて明記させてください。

 

 

 

拡散→混沌・探求→収束のフレームワークについてもう少し知りたい方はこちらもどうぞ。

新しいものを ”生み出す” 対話のコツ 拡散→探求→収束を意識した話し合いを実践する

この記事を書いた人

玄道 優子 ー 対話支援ファシリテーター

「難しい対話を見えやすく、触れやすく。小さな声を掬いやすく」自分の生きる場を他人任せにしない人に向けて、「これをやりたい!」を生み出せる場づくりを支援します。ITコンサルタントからキャリアチェンジ/多国籍やオンラインの場づくり/Miro革命出版準備中  /IAF Japan chapter 理事

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