多言語・多文化のプロジェクトをどう進める? タネから始まる東アジアのネットワークづくりへの挑戦

2022年4月22日

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今回は昨年1年をかけて取り組んだ、「日本・中国・韓国・台湾の4か国で種を守るためのネットワークづくり」のプロジェクトについてご紹介します。プロジェクトの内容としては別記事に書いたので、この記事では多国籍のプロジェクトの進め方として自分自身を振り返りながら、ポイントだなと思ったことをまとめてみました。多国籍でワークショップを行う機会がある、プロジェクトを進める機会がある人は、ぜひ目を通して見てください。

国を超えて、大切な話をする

オンラインが活発になったここ数年。念願だった国を超えてのプロジェクトやワークショップに関わる機会が少しずつ増えてきました。今回、在来種を守るためのネットワークを作る東アジアのプロジェクトに関わらせていただいたので、「どんな風にプロジェクトを進めてきたか」ということをまとめてみたいと思います。

オンラインの良さは場所を簡単に超えられることと、テクノロジーの力を借りやすいことにあります。多国籍でプロジェクトやワークショップを行う機会がある方はぜひ、ぜひ参考にしてみてください。もちろん、私たちの実践もまだまだ道半ばなので、こうして発信することで、他の方の取り組みについても出会えるといいなと思っています。

こんな感じで連続のワークショップを実施しました

多国籍でプロジェクトを行うときのポイント

まず今回のプロジェクトを通して感じた、多国籍でプロジェクトを行うときのポイントを5つまとめてみました。

可視化できるプラットフォーム

1つ目は可視化できるプラットフォームを持つこと。これはMiroがとても役立ちました。各回の進み具合を可視化できるとともに、同時に「参加していないけれども関心がある人」に向けての発信を兼ねることができるためです。これは、ファシリテーターチーム(※Miroについては主に私) が作り上げ、参加者の方には見てもらう専用で使いました。Miroのコメント機能を使って、参加者の母国語に変換をして載せておくことができるのも役立ちましたね。

ちなみに、多国籍のプロジェクトはそれぞれの国で使われているツールが異なるのと、また今回は中国在住の参加者がいるので、アクセスできるツールそのものに制限がある点 (google関連NG、よって動画もyoutubeは見れない) も大変でした。ちなみに過去に私が経験したグローバルプロジェクトだとコミュニケーションツールはWhats upとSlack、オンラインボードはMiroかMuralを使うケースが多いです。

多国籍プロジェクトは通訳が命

多国籍のプロジェクトでは通訳を介して行うケースも多いです。日・英でOKの場合は英語が母国語、または堪能なファシリテーターと組むことも多いのですが、今回は中国・台湾・韓国から参加している人がいるので、それぞれの国の言葉で通訳できる方がプロジェクトに加わっていました。

通訳を介したワークショップも、何度もやったことがありますが、多国籍のプロジェクトは通訳が命と言っても過言ではありません。 というのも通訳の方が理解していない or 納得していないことは こちらの意図通りに訳してもらうことができないため、ファシリテーターがどれだけ配慮して設計していてもそれが機能しないからです。

通訳の方の理想は探求するテーマ、つまり今回なら在来種・固定種などの古来から受け継がれてきたその土地の種を守っていくこと、食の未来について関心がある通訳の方に担当してもらえるのがベストです。更に欲を言えば、ファシリテーションの視点を持ってくださっている方だと最高ですが、そこまで求めるのは難しいので、次に出てくる「何のために」行うのかという、ファシリテーターの意図を細かく説明するコミュニケーションが必要になってきます。

「何のために」今これをしているのかはとにかくしつこく

先程の通訳が命にも通じますが、多国籍のワークショップや1つ1つのワークや、今やろうとしていることなど「なぜ今これをやるのか」という狙いを「しつこく」伝えることが大切です。日本語で、参加者が日本人のみの場合は、ファシリテーター(=その場を進めている人) の意図を推測しやすい & 知りたい場合はすぐに母国語で確認できるのですが、多国籍の場合はそこを丁寧にしすぎてもしすぎということはありません。

例えば、「Miroを使います」とか「Slackを使います」というときに「なぜこのツールを使うのか?その狙いは何か?」ということは「いちいち説明をする」くらいの心算が必要です。 そうでないと、いきなり知らないツールを押し付けられているという印象を持たれてしまったり、ワークショップが終わった後で「あの話し合いは意味ありますか?」という感想につながってしまいます。

各国のフィードバックをこまめにもらう

今回のプロジェクトは2時間 × 8回の連続ワークショップを続けていったのですが、各回を重ねていくと一部のワークやこちらが意図した話し合いが、機能するグループと機能しないグループが出てきてしまいました。(例えば、日本のグループでは小グループでの話し合いもすんなりできているが、韓国のグループだとあまり盛り上がっていないなど )

これは多国籍のワークショップではある程度仕方がない面もあるのですが、各回のワークショップが終わった後に「それぞれの国の参加者がどのような印象を持ったか」はこまめに聞く機会を持てると良いなと感じました。特に今回は主催・ファシリテーターチームが日本、参加者は日本・中国・台湾・韓国と4カ国から参加している状態だったので、毎回終わった後に、それぞれの国の通訳の方に参加者の様子を聞くようにしていました。

コミュニケーションを最初から全員参加型にしない

これは全ての多国籍のプロジェクトに通じるものではないのですが、今回のようにアジア圏のワークショップ・プロジェクトの場合は、文化的に初めから全てを参加型にしようとせず、一旦は「話題提供者の話を聞く」などの共通体験を作ることを優先した方が良いように感じました。

いくつか全員で、関心があるテーマを学びつつ、共通で話せる内容が成熟していってから話し合いをするように設計していく方が効果的です。オンラインだと、参加の度合いにグラデーションをつけることができる点が利点なので、いきなりブレイクアウトルームに分けるよりも全体で話をしながら、zoomやMiroでリアクションボタンを押してもらうなどの心理ハードルの低い自己表現の方法を取り入れていくのが進めやすい印象を持ちました。

多国籍のプロジェクトはある程度しっかりした枠組みが必要

これはIAFの活動をしていても感じることなのですが、「ファシリテーション」の意味合いが、日本国内と多国籍の場合と大きく異なる印象があります。 大袈裟に書くと、

  • 国内 (参加者が日本の人のみの場合) ・・・場をホールドする、その場にいる人が声を出しやすくするために安心安全の場を作る
  • 海外 (参加者が多国籍の場合)・・・ 場をしっかり設計する、その場にいる人が迷わず、意見を分かりやすく把握し合えるような場を作る

という感じ。繰り返しますが、傾向なのでこれが全てというわけではありませんが、多国籍の場の場合は参加者一人ひとりの違いが大きいので、かなりしっかり事前設計をする必要があると考えています。日本人のみの場よりも手間と時間がかかるのですが、その分お互いの違いから学ぶ度合いも大きくなるので、私は多国籍のプロジェクトがとても好きです。

違いを体験できるからこそ、身近な人の違いも受容できる

私が多国籍のワークショップやプロジェクトに感じる魅力は、参加することで自分のことに気づきやすくなること、そして日本で身近にいる人の違いにも寛容になれるところです。海外旅行に行ったことがある人の方が、日本の素晴らしさに気づく視点を持ちやすいですし、いろんな違いのある人と出会い、コミュニケーションをとっている人の方が、目の前の人の中にも違いが存在しているという目線を持ちやすくなると考えています。

オンライン化が進み、国を超えた人たちとの出会いや、コミュニケーションを取ることができる機会は増えていると実感しています。そこで、お互いの未来において大切な話ができる場のサポートをしていきたい。これからも今回のような機会に巡り合えることを願っています。

この記事を書いた人

玄道 優子 ー 対話支援ファシリテーター

「難しい対話を見えやすく、触れやすく。小さな声を掬いやすく」自分の生きる場を他人任せにしない人に向けて、「これをやりたい!」を生み出せる場づくりを支援します。ITコンサルタントからキャリアチェンジ/多国籍やオンラインの場づくり/Miro革命出版準備中  /IAF Japan chapter 理事

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